ベッドに入る前、ケトルになみなみと水を注いで沸騰させておく
朝起き抜けにこれをお気に入りのボヘミアのグラスで2杯グイッと飲み干して動き始める
1月から週の半分だけを営業日として始めた古物の店は、人を頼まず一人でのびのびとそしてスローにやっている
これまでの十数年といえば、理由はどうあれスタッフが辞めると、まるで雇用主の自分の人格まで否定された様な気になり落ち込んだものだ
が、誰も雇わないのだからそんなストレスとは無縁で日によっては1時間遅れで店にたどり着いたり挙句先日などはついズル休みをしてしまう有り様だ
、、自分に厳しすぎるという自覚があったわたくしが、まさかこんなゆるゆるとしたいい加減な人生の後半を送ろうとは
そう思っただけで、今もニマニマしているなんて!わたくし自身予想だにしなかった展開で、愉快になってきた
まるで再び巡ってきたモラトリアムだ
看板を掲げていない得体の知れない店のドアを開けて入ってこられる方は、小さなショーケースに目を留めて下さる愛好者ばかりではなく、好奇心だけの方、cafeと間違えた方、おしゃべり好きの方、目的のよくわからない迷子のような方など、、一対一で向き合う台本のないドラマだ
7時間の営業時間に結局一度もドアのベルが鳴らない日も何度もあったけれど、そんなことに一喜一憂しつつ、寒い冬からあっという間に薫風の候を迎えた
出勤前の支度のルーティンの『香り』も、冬場は包容力のある濃厚な
エルメスの「24 FAUBOURG」や、マドエレンの妖艶な「RED MUSC」をチョイスしていたのが、いつの間にかベルガモットやアプリコット系のものにスイッチしていた
何時も何かに急かされて爪先立ちで走っていたような60年が、良くも悪くもあったからこその今
わたくしを取り巻く家族や友人知人の存在のお陰で今を迎えたことに改めて手を合わせる思いだ